投稿者:TSURUKO
2011年6月、私は子を出産しました。その3か月前、東日本大震災が起きました。
当時妊婦だった私は自分の誕生日、東北の地で暮らす、同じようにおなかの大きい妊婦さんの情景を思い、まさに出産中の方もいるのではないかと他人事には思えず、その3か月後に産まれてくれたわが子を抱きながら、メディアから日々繰り広げられる東北の悲惨な光景を目にし、ここに生きていてわが子と会えたことは奇跡だと深く思いました。
CRCを職業としてすでに10年以上が経ちましたが、様々な治験に関わらせて頂く中で、小児科、婦人科、がん患者さんの対応、命に関わるたくさんの経験の中に本当に多くの学びがありました。
ですが、世界各地で多くの災害や戦争が起き、誕生日以外は2011年のその時の記憶を思い出すことが少なくなっていた頃、ある法事でお坊さんがこのような言葉を授けてくれました。
お坊さんは、肩幅くらいの寸法にご自分の両手を示し、こう問いかけました。「仮に、あなたが産まれた時をこの右手の指すところとし、あなたが死ぬ時(寿命)をこの左手のところとします。では、あなたは今、この瞬間、この右手と左手の間のどのあたりに生きていると思いますか…?」
私は心の中で「まだ始まって1/3くらいのところにいるのかな」と漠然と想像しました。しかし、お坊さんは「常に、この左手の、ほんのすぐ手前に生きているのです」とだけ仰いました。
難病を持って生まれた子、そのお母さん、末期がんの患者さん、CRCをして関わってきたすべての出会いが奇跡だと思いますし、どんな境遇でも治験に参加して下さった心の広さに頭が下がります。誰にとっても、素晴らしい明日が迎えられるよう、毎日、今日を精一杯悔いの無いように、生きていけますように。私が、毎年の誕生日に思うひとつの願いです。
CRCを職業とし、ひとつひとつの出会いから多くの学びがあります。過去にも未来にも繋がる多くの今を大切に、これからも日々精進していきたいと思います。